AIチャットボットや業務支援ツールにおいて、文脈に基づいた正確な回答を行うには「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」の活用が不可欠です。DifyではこのRAG構成を簡単に導入できますが、用途に応じたカスタマイズを施すことで、さらに高い応答精度と業務適合性が実現します。
本記事では、DifyのRAG構成の仕組みを解説し、より効果的に活用するためのカスタマイズ方法を紹介します。
RAGとは何か:仕組みの基本
RAGとは、ユーザーの質問に対して関連情報を検索し、その情報を大規模言語モデル(LLM)のプロンプトに組み込んで回答を生成する仕組みです。主に以下の2ステップで構成されます:
- Retrieval: ユーザーの質問をベクトル化し、ドキュメントベース(ベクトルストア)から類似情報を検索
- Generation: 検索結果をもとに、LLMが自然言語で回答を生成
DifyにおけるRAG構成の流れ
- DifyのKnowledgeセクションでPDFやCSVなどの資料をアップロード
- アップロードした文書が自動的に分割・ベクトル化され、ナレッジベースとして登録
- アプリ内のプロンプト設定で「Knowledge」を参照対象に指定
- 質問のたびにRAGが実行され、関連情報をもとに回答が生成される
出典:Dify公式「Create Knowledge Base」
検索対象の制御方法(カテゴリ・フィルタ)
RAGの検索精度を高めるには、検索対象の制御が重要です。Difyでは以下の設定が可能です:
- カテゴリ(Collection): 資料をカテゴリごとに分類。アプリごとに参照カテゴリを指定可能。
- フィルタ(Tag): 文書単位にタグを設定し、検索時に条件絞り込みが可能。
- 検索条件の明示: プロンプト内で「人事カテゴリのみ参照してください」などの制約を記述することも有効。
ベクトル化を最適化するテクニック
- 構造化された文書を使う: PDFではなく、WordやTXT形式で段落構成が明確なファイルが最適
- チャンクサイズの調整: 自己ホスト型では「分割単位」や「重なり幅」を調整することで精度向上
- プレプロセッシング: 文書中の不要な記号やヘッダー・フッターを除去
出典:Dify公式「Create Knowledge Base」
応答精度を高める設計パターン
RAGの効果を最大化するためのプロンプト設計例を紹介します:
あなたは社内FAQアシスタントです。以下のナレッジベースから情報を探し、簡潔に回答してください。
- 必ず参照文書の情報のみに基づいて回答する
- 回答できない場合は「情報が見つかりませんでした」と返答する
- 出典のタイトルを明記する
カスタマイズ事例:実務に応じた構成変更
- 事例1:製品マニュアルのAI応答 → 製品カテゴリごとにナレッジを分離、ユーザーの質問内容に応じてフィルタを動的適用
- 事例2:人事ポータルの問い合わせ対応 → 社員属性に応じた参照カテゴリ(新入社員/管理職)を切り替え
- 事例3:FAQの多言語対応 → 英文・和文マニュアルを別々に登録し、言語設定に応じてナレッジ切り替え
まとめ
DifyにおけるRAG構成は、標準設定でも高精度ですが、用途に応じたカスタマイズによりさらなる精度向上が見込めます。カテゴリの分離、タグによるフィルタ、ベクトル化の調整といった設計要素を活用することで、よりスマートなAI応答を実現しましょう。
次回予告
次回の【Dify連載10】では、「Difyのプロンプトエンジニアリング完全ガイド」と題し、効果的なプロンプトの書き方と業務適用例を詳しく解説します。